ページタイトル麻酔科

麻酔科(選択必修)プログラム

概要

(1)麻酔科(選択必修)プログラムは、選択必修科目として麻酔科を2月選択する場合の研修プログラムである。

(2)選択期間中には指導医と相談の上、研修医一人ひとりが自分のキャリア育成に合致したSBOsを設定することができる。

臨床研修指導医 診療部長(麻酔科)上田 敬一郎

目標

一般目標(麻酔科(選択必修)研修GIO)

将来遭遇しうるいかなる状況においてでも思いやりを持ちながら良質な全人的医療を行うために、周術期管理の知識・診断・技術を習得することを通して、将来の専攻する診療科にかかわらずプライマリケアの臨床に必要な基本的診療能力(態度、技能、知識)を修得する。

行動目標(麻酔科(選択必修)研修SBOs)

EPOCで定める評価項目の達成とする。

代表的な術前合併症に対する麻酔上の注意点を列挙できる(想起)。
(高血圧、虚血性心疾患、喘息、糖尿病、フルスタマックを含む)
術前患者の麻酔上の問題点を評価できる(解釈)。
術前患者の医療面接を経験する(技能)。
合併症のない術前患者に全身麻酔の説明ができる(問題解決)。
◎麻酔器・人工呼吸器の準備・操作ができる(技能)。
カプノメータ・パルスオキシメータ上の異常の解釈ができる(解釈)。
◎患者の不安を和らげるために適切に声かけ・説明を行う(態度習慣)。
代表的な薬剤をmg/kg、μg/kg/min で計算し投与できる(問題解決)。
薬物誤投与防止のための確認を実施できる(態度・習慣)。
定められた患者の取り違え対策を行える(態度・習慣)。
気道確保方法の利点・欠点を比較論述できる(解釈)。
◎マスク・バッグによる気道確保ができる(技能)。
◎気管挿管ができる(技能)。
気管挿管チューブの位置を確認する(態度習慣)。
気管挿管の合併症を述べることができる(想起)。
吸入麻酔薬(セボフルラン)を使用できる(問題解決)。
静脈麻酔薬(プロポフォール)を使用できる(問題解決)。
麻薬(レミフェンタニル、フェンタニル)を、処方をふくめ使用できる(問題解決)。
筋弛緩薬と拮抗薬を使用できる(問題解決)。
◎麻酔記録用紙を記入しながら常時適切な患者監視を行う(態度・習慣)。
血圧低下に対処できる(問題解決)。
低酸素血症の鑑別ができる(解釈)。
硬膜外麻酔、脊椎麻酔の効果、禁忌、合併症を列挙できる(想起)。
硬膜外麻酔、脊椎麻酔の実施手順を説明できる(想起)。
脊椎麻酔を体験する(技能)。
挿管チューブの抜管の基準を述べることができる(解釈)。
病棟の人工呼吸器の初期設定ができる(問題解決)。
術後訪問ができる(態度習慣)。
手術中の次の合併症について、診断、治療について説明できる(想起)。
不整脈、血圧低下、血圧上昇、気管支痙攣、低酸素血症。
◎静脈路確保ができる(技能)。
動脈採血ができる(技能)。
内頸静脈カ テー テル留置(CVC)の適応、手順、合併症を説明できる(想起)。
術中の血液ガス分析を解釈できる(解釈)。
術中輸液管理の原則を述べる(想起)。
事務手続きを含め輸血操作ができる(問題解決)。
覚醒遅延をきたす原因を列挙できる(想起)。
低体温患者への対処法を列挙できる(想起)。
手術創部感染(Surgical Site Infection: SSI)のポイントを列挙できる(想起)。
◎感染防御を実施する(態度・習慣)。
針刺し事故の防止法を実践できる(態度・習慣)。
◎今から行おうとする麻酔症例の症例提示ができる(解釈)。
◎適時に報告・連絡・相談ができる(態度・習慣)。
チームメンバーとして、リーダーの指示に従う(態度・習慣)。
チームリーダーとしてメンバーに指示する(態度・習慣)。

【麻酔科チェックリスト】

(下記)を利用して研修医ごとにSBOs を追加することもできる。

1. 始業点検

□ 電源コンセント
□ パイピングの接続
□ 余剰ガス
□ ボンベ残量
□ 気化器に補充しダイヤルが回るのを確認
□ 麻酔回路接続
□ ガスサンプリングチューブ接続
□ 麻酔器の電源
□ 酸素濃度測定装置をキャリブレート
□ 麻酔器アラームの設定
□ 回路のリーク確認
□ 吸気呼気弁の動き確認
□ 換気および回路内圧アラームの作動確認
□ 人工呼吸器の作動確認

2. リークテスト

□ 手で回路を閉じる
□ ポップオフバルブを閉じる
□ バックを押して圧が逃げない
□ ガスの漏れる音がない
□ ポップオフバルブをあけるとガスが噴出
□ テストラングをつけ呼気弁・吸気弁が正常に動く

3. 人工呼吸の作動確認

□ 人工呼吸の設定をする
□ 酸素を6 /・min-1 流してスイッチを入れる

4. アラーム作動確認

□ 換気をとめて低換気,無呼吸アラームがなる
□ バッグに圧を加えて回路内圧アラームが作動する

5. Spo2 の低下時の対処

□ O2 濃度をあげる
□ 気道内圧を見る
□ ETco2 の波形を確認する
□ 用手換気に切り替える
□ 麻酔回路,気管チューブをチェックする
□ 指導医を呼ぶ
□ 指導医の指導のもと気管内吸引を行う
□ 胸郭の動きを確認する
□ Spo2 のプローベの装着の確認

6. 全身麻酔の説明

□ 自己紹介
□ 患者の確認
□ 前日の絶飲食の説明
□ 当日の手術室への説明と手術室内での説明
□ 全身麻酔の具体的な流れ
□ 全身麻酔のリスク

7. 全身麻酔で起こりうる合併症

□ 歯牙損傷
□ 嗄声
□ 咽頭痛
□ 悪性高熱症
□ 薬などのアレルギー
□ 肺梗塞
□ 脳梗塞
□ 心筋梗塞
□ 死亡・植物状態

8. 脊髄くも膜下麻酔の説明

□ 当日の手術室への説明
□ 手術室内に入ってから体位をとるまで
□ 腰椎穿刺の具体的な流れ
□ 使用する薬物

9. 硬膜外麻酔(全身麻酔併用)の説明

□ 硬膜外麻酔をなぜ行うか
□ なぜ起きている間に行うか
□ 当日の手術室への説明と手術室内に入ってから体位をとるまで
□ 硬膜外穿刺の具体的な流れ
□ 起こりうる比較的多い合併症
□ 硬膜外で使用する薬物
□ 術後の使用期間
□ 術後の入浴

10. 人工呼吸器の初期設定

□ TV:10ml・kg-1
□ RR:10 回・min-1
□ PIP:20cmH2O 以下
□ I:E=1:2

11. 術前診察でコンサルトが必要な場合

□ 循環器疾患
□ 半年以内の急性心筋梗塞
□ 著明な心機能低下
□ 不安定狭心症
□ 呼吸器疾患
□ 肝疾患
□ 腎疾患
□ 慢性透析
□ 利尿薬投与
□ 電解質異常
□ 極度の貧血
□ 出血傾向,抗擬固薬使用
□ 代謝・内分泌疾患
□ 精神疾患
□ 神経系疾患
□ 開口障害、頸椎の病変
□ エホバの証人

12. 患者入室から麻酔導入まで

□ 挨拶,自己紹介
□ 氏名,本人の確認
□ 手術部位の確認
□ 麻酔や手術の準備の説明
□ パルスオキシメトリ,心電図,血圧計
□ 心電図の記録
□ 血圧の測定
□ 静脈路の確保
□ マスク,麻酔薬の投与の開始の説明
□ 酸素投与の開始

13. 抜管時の目安

□ 開眼
□ 開口
□ 離握手
□ TV:10ml・kg-1 以上
□ 呼吸数10 回・min-1 以上

14. 脊髄くも膜下麻酔の合併症

□ 術中低血圧
□ 悪心,嘔吐
□ 心停止
□ 呼吸停止
□ 術後の頭痛
□ 術後の一過性のしびれ
□ 神経損傷の可能性
□ 血腫形成
□ 感染
□ 高位脊麻
□ 局麻薬中毒
□ 腰背部痛

15. 硬膜外麻酔の禁忌

□ 循環血液量の低下した患者
□ 患者拒否
□ 体位がとれない
□ 全身感染症、あるいは穿刺部の感染
□ 出血傾向、抗擬固薬使用

16. 酸素ボンベの色と使用法

□ 黒
□ 交換の目安:30bar 以下

17. 低血圧の対処

□ 再測定
□ 脈を触れ、触診で確認する
□ 心拍数をチェックする
□ 指導医を呼ぶ
□ 術操作(出血や大血管の圧迫など)による影響を確認する
□ 麻酔深度を確認する
□ 100%酸素を投与する
□ 輸液のスピードを速める
□ トレンデレンブルグ体位をとる
□ エフェドリン1A を計10ml に準備する

18. 高血圧の対処

□ 麻酔深度を深める
□ 指導医に相談
□ ニカルジピン0.5 ~1mg i.v.

19. 術中バッキングの対処

□ 人工呼吸から用手換気に切り替える
□ 弁を開放する
□ 麻酔深度をあげる
□ 筋弛緩薬を投与する

20. 脊髄くも膜下麻酔の準備

□ 全身麻酔の準備
□ ディスポーザブルの麻酔セット
□ 薬液
□ エフェドリン
□ アトロピン
□ モニター
□ 静脈確保

21. 脊髄くも膜下麻酔 の手技

□ 体位
□ 消毒,穴あきシーツ
□ 0.5%高または等比重マーカイン2 ~3ml
□ ヤコビー線で穿刺部位の確認
□ 穿刺部位の局所浸潤麻酔
□ 穿刺
□ フラッシュバックの確認
□ 内針を抜き髄液の返りを確認
□ 針を90 度回転して逆流の確認
□ 薬液注入
□ 血圧を1 分間隔で測定
□ 冷刺激の確認
□ 痛覚の確認
□ 手術の体位

22. 気管内挿管の準備

□ 喉頭鏡の点灯
□ 気管チューブ
□ バイトブロック
□ エアウェイ
□ カフ用注射器
□ スタイレット
□ 聴診器
□ 吸引
□固定用テープ

23. ASA physical status

□ 正常健康患者1
□ 軽度の全身疾患2
□ 中程度以上の全身疾患,日常の活動が制限3
□ 生命をおびやかす程の全身疾患,日常の活動が不能4
□ 瀕死の24 時間以内に死亡すると考えられる患者5
□ 脳死患者ドナー6
□ 緊急手術,番号の後にE をいれる

24. 徐脈の対策

□ 原因の検索
□ 術操作との関連の確認と術者への報告
□ 血圧測定,維持
□ アトロピン投与
□ 麻酔指導医をよぶ

25. 乏尿の対策

□ 適正な輸液
□ 血圧の維持□ カテーテルトラブルの有無
□ 体位などの影響の考慮
□ 利尿薬

26. 脊髄くも膜下麻酔の薬液の投与量

□ 高比重0.5%マーカイン2 ~3 ml
□ 等比重0.5%マーカイン2 ~3 ml

27. 手術中の輸液量の目安
□ 開腹手術10 ml・kg-1・hr-1
□ 開胸手術5 ~7 ml・kg-1・hr-1
□ 開頭手術3 ml・kg-1・hr-1
□ 体表面の中程度の手術3 ~6ml ・kg-1・hr-1

28. 低体温の対処

□ 温風マットの温度をあげる
□ 輸液の加温、室温を上げる
□ 冷やさない
□ バスタオルなどを使用する

29. 急速導入で使用する薬物

□ プロポフォール1 ~2 mg・kg-1
□ フェンタニル2 ~4 μg・kg-1
□ ロクロニウム6 ~9 mg・kg-1

30. 回復室または病棟帰室時に行うこと

□ 覚醒状態の確認
□ Spo2 の確認
□ 血圧測定を行う
□ 気道と呼吸の確認
□ 麻酔指導医に報告
□ 麻酔指導医の指示のもと鎮痛薬投与

31. 筋弛緩投薬(ベクロニウム)の投与量

□ 気管内挿管の際の投与量6 ~9 mg・kg-1
□ 維持の投与量1.5 ~2.0 mg・kg-1
□ 原則は投与間隔20 ~30 分
□ 持続投与では0.3~0.5 mg・kg-1・h-1

32. 筋弛緩薬の拮抗薬のタイミング、量

□ 自発呼吸
□ 吸引刺激で十分なバッキングがある
□ スガマデクス2~4 mg・kg-1

33. 小児の気管チューブ

□ 早期産児:2.5 ~3.0
□ 満期産児~3 ヶ月:3.0
□ 小児3~9 ヶ月:3.5
□ 小児9~18 ヶ月:4.0
□ 小児18 ヶ月~2 歳:4.5
□ 小児2 歳以上:5

34. 心肺停止の際に使用する薬剤

□ エピネフリン1 mg を3-5 min 毎
□ リドカイン
□ アトロピン1 mg 3-5 min 毎、3 mg まで

35. 前投薬の目的(知識として)

□ 不安の除去,鎮静
□ 有害反射の抑制
□ 気道分泌物の抑制
□ 胃液pH 上昇,胃液分泌量の減少

36. フルスタマックの麻酔導入

□ Crash induction
□ 自発呼吸下に純酸素投与
□ 静脈麻酔薬,筋弛緩薬を急速静注
□ マスクによる陽圧換気を行わない
□ 輪状軟骨圧迫
□ Precuralization
□ awake induction

37. 術前に休薬が望ましい抗凝固薬

□ ワーファリン(ワルファリン) 7日 
□ パナルジン(チクロピジン) 14日
□ バファリン(アスピリン) 7 日
□ エパデール(イコサペント酸エチル7 日
□ プレタール(シロスタゾール) 4 日
□ アンプラーグ(塩酸サルポグレラート) 2日
□ ペルサンチン(ジピリダモール)2日
□ ドルナー(ベラプロストナトリウム) 2 日

38. 小児の絶飲食時間

□ 新生児1M まで:2 時間前
□ 新生児1M まで:milk4 時間前
□ 乳児1 歳まで:3 時間前
□ 乳児1 歳まで:milk6 時間前
□ 幼児・学童1Y 以上:3 時間前
□ 幼児・学童1Y 以上:milk6 時間前

39. 輸血の目安

□ 出血15 ml・kg-1 以下晶質液出血の3 倍量
□ 15-20 ml・kg-1 膠質輸液
□ 20ml・kg-1 以上輸血

40. 輸血の際に実際に行うこと

□ 血液検査,貧血の有無の確認
□ 麻酔指導医に相談
□ 術者に報告
□ 血液型をカルテの血液型用紙で確認
□ 有効期限の確認
□ 血液製剤と輸血伝票のロットナンバーの一致の確認
□ 交差適合試験(-)の確認
□ 照射済みの確認
□ 加温

41. 小児の術中維持輸液

□ 体重10kg まで:4 ml・kg-1・hr-1
□ 体重20kg まで:20+BW×2 ml・hr-1
□ 体重20kg 以上:40+BW ml・hr-1

42. 手術中の空気塞栓症のモニター
□ ETco2
□ Spo2
□ 血圧

43. 手術中の空気塞栓症の対処

□ 術者に報告する
□ CVP から空気のドレナージ
□ 循環の維持
□ 左側臥位、頭部低位

2.麻酔科で修得するのが望ましいEPOC 項目(マトリックス表で○)

A-1 医療面接
A-2-1 全身観察
A-3-5 心電図(12 誘導)
A-3-6 動脈血ガス分析
A-3-7 血液生化学検査
A-3-10 肺機能検査
A-4-3 心マッサージ
A-4-7 採血法
A-4-8 穿刺法(腰)
A-4-10 導尿法
A-4-12 胃管の挿入
A-5-2 薬物治療
A-5-3 輸液
A-5-4 輸血
A-6-1 診療録作成

C-1 救急医療(救急医療の現場を経験すること)

(1)バイタルサインの把握ができる
(2)重症度、緊急度の把握ができる
(3)ショックの診断・治療ができる
(4)ACLS が実施でき、BLS を指導できる
(5)専門医へのコンサルテーションができる

3.全ての科で目標とする項目(マトリックス表では○)

1.医療人として必要な基本姿勢・態度

(1)患者-意思関係
(2)チーム医療
(3)問題対応能力
(4)安全管理
(5)症例呈示
(6)医療の社会性

方略(LS)

指導医数 臨床研修指導医1名
同時研修は各学年1 名を原則とする。
OJT(On the Job Training)が主体。
症例ごとに指導医・上級医とマンツーマンで研修する。
気管挿管については、はじめにシミュレーターを利用。
講義(主として麻酔中に行うミニレクチャー、一部は30 分程度の講義)
症例カンファレンス、輪読会に参加する。
カンファレンス
症例カンファレンス(翌日の麻酔症例の検討) 毎日。

★週間予定(月~金)
8:30 始業時ミーティング、麻酔準備
9:00 午前症例の麻酔開始
13:00 午後症例の麻酔開始
夕方翌日症例の症例カンファレンス

評価(EV)

形成的評価(フィードバック)。
知識(想起、解釈、問題解決)については随時行う。
態度・習慣、技能についても随時行う。
技能についてはチェックリスト、評定尺度の使用を推奨。
態度・習慣については観察記録の使用を推奨。
【麻酔科チェックリスト】(下記)を利用して自己評価する。