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ページタイトル米子医療センターの担うべき医療と方向性

-鳥取県西部医師会報 2007 掲載原稿-
院長就任挨拶

古瀨清夫(名誉院長)先生のあとを受けて、平成18年11月1日に院長に就任いたしました。
米子医療センターに赴任してきました当日が偶然にも、米子医療センター(旧国立米子病院)の創立60周年記念日で、国立病院機構の病院としての使命と地域のなかに刻まれた歴史の重みを痛感いたしました。

浅学非才ではありますが、西部医師会の先生方のご指導とご支援を頂いて、鳥取県西部の地域医療に貢献できればと願っています。鳥取県西部とくに米子市には、設置主体が国の3病院(鳥取大学医学部付属病院、米子医療センター、山陰労災病院)が並立し、いずれも急性期医療を展開しています。

ここ数年は医療資源である医師や看護師などの派遣や供給が滞り、提供すべき医療サービスや機能に若干の偏りが生じていることは否めませんが、このような状況の中では、自院の特徴を最大限に生かし、地域の中で医療機能を分担できることが重要であろうと考えます。

当センターは、平成11年の国立病院再編成計画の見直しの中で、「がん医療」と「腎医療」を政策医療として掲げ、医療体制を整備してきた経緯がありますので、今後も、この2つの領域を診療の柱として充実させ、病院を運営して参りたいと思います。

腎移植に関しては、昭和58年に鳥取県で唯一の献腎移植施設に指定され、平成9年には日本臓器移植ネットワークから移植検査センターとして承認されました。

当院での腎移植例は、私個人の経験例を併せますと、献腎移植症例が8例、生体腎移植症例が20例の計28例に及びます。

最近は免疫抑制剤や移植技術の進歩とともに腎移植の成績は格段に良くなりましたので、夫婦などの非血縁者間やABO血液型不適合者間の移植にも問題なく対処できるようになり、生体腎移植の件数は今後さらに増加することが予想されます。

一方、献腎移植のドナーは心停止でも脳死でも構いませんが、県内でドナーが発生しない限り、県内の移植希望者(登録)には腎臓は届かない仕組みになっていますので、鳥取県の献腎移植を推進していくには、行政と臓器移植コーディネーターが中心になって関係機関と移植医が協同するドナーアクションが必要だと考えています。

つぎに「がん医療」に関してですが、我が国では昭和58年からの「対がん10か年総合戦略」とそれに続く「がん克服新10か年戦略」で様々な取り組みがなされてきましたが、平成16年人口動態統計によると、がんによる死亡者は人口10万人対 254人と依然として増加傾向にあり、死亡者の約3人に1人ががんで亡くなっているのが実状です。

そこで、「第3次対がん10か年総合戦略」や「メディカルフロンティア戦略」では、がんの罹患率を激減させ、さらにがん患者の5年生存率を20%アップさせるという目標が掲げられました。この点を踏まえて、平成18年6月に議員立法として「がん対策基本法」が制定されたわけですが、これまでの戦略との大きな違いは全国どこにいても質の高いがん医療を受けることができる「がん医療の均てん化」と、「医療ニーズ本位から患者ニーズ本位」という患者視点の重視の2点ではないかと思います。

「がん医療の均てん化」の対策として、2次医療圏に各一箇所の地域がん診療連携拠点病院を置いて地域における診療連携体制を確保し、その上に都道府県に1カ所のがん診療連携拠点病院を設置することになりました。

当センターは、放射線治療の設備を持っていますので(図1)、がん腫の種類や進行度に応じて外科治療、化学療法、放射線治療あるいは緩和医療が可能で、平成17年1月に地域がん診療拠点病院に指定され継続認定されていますが、平成20年3月までに再指定を受ける必要があります。「がん医療の均てん化」の活動の一端として、昨年の11月に、鳥取県西部医師会との共催で「在宅におけるがん終末期医療推進に関する講演会」を開催しましたところ、たくさんの皆さんにお集まり頂き、大変に好評でしたので、この3月にも緩和医療に関する講演会を開催する予定で進めています。

さらに1月から3月には、終末期医療に携わる医療従事者を対象に「在宅におけるがん終末期医療推進の研修会」を3回行ってきました。このような活動を通して、がん患者さんの療養生活の質が地域の中で高く維持されることを願っていますし、当センターのがん診療拠点病院としての機能がさらに高まることを期待しています。

一方、がんに罹患された患者さんやご家族に対しましては、満足・納得して頂けるようながん情報の提供や相談機能を持った「がん相談支援センター」を今年度中には立ち上げたいと考えております。

とりあえずは1月25日に、がん患者さんやご家族が気軽に交流できる場として、当センター内に「スマイルサロン米子」を開設いたしました(図2)。

「スマイルサロン米子」は患者さん方の自主運営で、毎週木曜日の13時から15時にオープンいたします。部屋にはソファー、机、椅子などを設置し、コーヒー、お茶、コップなどを用意しています。

がん患者さん方には治療への不安、生活の不安、再発に対する恐怖など様々な問題について意見交換をしていただき、「スマイルサロン米子」が希望と勇気と安らぎを与える場になることを願っています。参加されるのは自由かつ無料ですので、院内外の患者さん方に広くご利用頂きたいと思います。

当センターの大型医療機器につきましては、平成17年5月に乳房診断用エックス線(マンモグラフィー)装置が更新され、9月に血管連続撮影装置が新設されています。また平成18年には、3月に血液透析装置を7台に増設し、9月にMRI(磁気共鳴画像診断)装置を1.5テスラの最新鋭機に更新しました.さらに、今年の秋には16列の MD-CT(多検出器型CT)が設置される予定ですので、医師会の先生方にはどうぞご利用いただければと存じます。

最後に、当センターは敷地が手狭で、さらに病院の建物が老朽化していますので、患者さんや医師会の先生方に大変にご迷惑をおかけしていますが、職員一人一人が心のこもった質の高い医療サービスを心がけておりますので、ご支援とご協力を賜りますようお願い申し上げます。

図1.高エネルギー放射線発生装置(リニアック;東芝) 図2.がん患者サロン「スマイルサロン米子」

高エネルギー放射線発生装置(リニアック;東芝)がん患者サロン「スマイルサロン米子」